生れ育った街に 一本の川があった
対岸には自動車教習所
ひろい道路とミニチュアのような踏切 信号機
小高い丘を越える坂 何本ものポールが立っている路側帯
川を渡って崖をよじ登り 生垣の間からいつも眺めていた
見ているだけで楽しい
そこは まるでユートピアのようだった
しばらくすると鬼のような教官が怒鳴りながらやってきて 僕らはいつも慌てて逃げた


隣接する雑木林までが僕らの テリトリーだった
百舌鳥と鴫(しぎ)の棲む林だ
ある祝日
ついにその林を抜けて 近所の子らと教習所に忍び込んだ
ひとっこ一人いない
僕らは 芝生を転げ はしゃぎまわって遊んだ

すぐ近くに 橋はあったが いつも川に下りて崖をよじ登って
鴫の林に向かった

橋を渡ると いい子になってしまう気がしたからだ
なぜだろう

昨年の2月に紹介した のどかな土手に下りてみた

オオイヌフグリがもう 小さな花を咲かせていた

No.14
No48
2003.01.21
|